美学会西部会 2023年12月9日(土)

ポスター 01

Gefühlは「触覚」か(いつから)「感情」か

杉山卓史(京都大学)


カントの『判断力批判』(1790年)本文は「何かが美しいか否かを区別する際、われわれは表象を…構想力によって主観と主観の快または不快のGefühlとに関係づける」という一文で趣味判断の構造を提示することから始まる。ここでのGefühlは、言うまでもなく「感情」である。しかし、このような用法は、当時としては決して自明のものではなかった。カントの学生であったヘルダーは「触覚」と「感情」というGefühlの両義性を駆使して『言語起源論』(1772年)を展開しているし、さらに時代を遡ると、この語を五感の一つとしての「触覚」としてのみ用いるヴォルフの『神、世界、人間の魂ひいてはあらゆる物一般についての理性的思考』(1720年、『ドイツ語形而上学』)に行き着く。これをもって、1720年に「Gefühlにおける『感情』の不在」という事態を仮定することができよう。だとすれば、ここから1790年までの間のいつ・どこで「感情」という意味が生まれたのか?本発表は、この問いに答える試みである。

01_触覚か感情か(杉山).pdf


ポスター 02

ピエロ・デッラ・フランチェスカ《モンテフェルトロ祭壇画》における色大理石の問題

杉山太郎(京都大学)


ピエロ・デッラ・フランチェスカ作《モンテフェルトロ祭壇画》(1475-77年頃)の画中背景には、規則的に配置された色大理石パネルが描かれている。先行研究は、本作の制作年代推定や制作目的をめぐる議論を中心に行っており、色大理石についての詳細な言及は見られない。対して、発表者は、その表現の視覚源泉の特定を試みる。色大理石の形象は、ディディ=ユベルマン(Huberman, 1990)以来、美術史研究において注目を集めるようになった。しかし、ルネサンス期の絵画に現れる疑似色大理石の造形は多岐にわたり、それらの意味作用の分析は、個別の主題や制作の文脈に応じて慎重になされるべきであるため、今後一層の進展が望まれる。そこで発表者は、文化史研究の知見(Price, 2007等)を援用し、色大理石の石材の15世紀当時の受容状況を確認する。それにより、本研究は、問題の色大理石の描写に、ピエロの造形意識と同時代の物質的関心が混在していることを具体的に論証する。

02_色大理石(杉山太郎).pdf