高安啓介

何かの目的のための活動それ自体がいつのまにか目的となることはよくあります。皆さまと考えてみたいのは、社会活動における場合です。たとえば、集団で何かを生み出す活動それ自体が、生み出されるものと同等かそれ以上の価値をもつような場合や、問題の解決に向けた取り組みそのものが魅力をもちうる場合や、人々の良い人生を実現するための活動それ自体がすでに、人々の良い人生となっているような場合など、心当たりがあるはずです。ものの美しさとは 、物事それ自体の良さであり、何らかの快をともなう良さをいうのならば、社会活動それ自体にも、美とは言わないまでも、喜ばしさや、親しみや安らぎ、高揚感など、何らかの美質が見出されうるものと思われます。市民の社会参加はかならずしも崇高な目的のためではなく、活動それ自体の魅力によるところが大きいならば、社会活動の美しさについて考えることは、市民を巻き込んだ実践にとって多少なりとも意味があると思われます。


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